内容
東日本大震災は大津波と放射能災害という未曾有の事態を引き起こし、人びとの生活基盤、地域の産業基盤を崩壊させた。この点、地域産業や中小企業の復旧に対して、設備投資金額の4分の3を補助する「グループ補助金」の役割は大きかった。これにより、約一万の企業が事業用設備を回復させている。また、事業用仮設施設の無償提供により、3000を超える事業所が仮の操業環境を回復させた。 1995年の阪神・淡路大震災の際には、多くのボランティアが被災地を訪れ、被災者の生活支援に大きな役割を演じ、日本の「ボランティア元年」といわれるほどの高まりをみせた。今回の東日本の場合は、被災者の生活支援に加え、多方面にわたる復興支援が行われている。被災直後の漁船の提供、事業用仮設テントの提供、カキやサケのオーナー制、復興ファンドの提供などがみられた。さらに、NPO、社会企業家、民間企業のCSR(企業の社会的責任)部門等が、継続的な支援を意識した興味深い活動を重ねている。 被災地の多くは従前から条件不利地域であり、人口減少・高齢化が著しく進んでいた。今回の被災により、さらに人口を大きく減少させている。帰還を願っている年配者たちは、「若者のいないまちは、終わりだ」とつぶやいている。地域産業の復旧・復興、雇用の場の提供、さらに進んで希望に満ちた新たな産業の創設が、不可避なものになっている。 本書ではそのような点を意識し、被災の各地で取り組まれているNPOや社会企業家による産業復興支援、新たな事業創出支援等の取り組みに注目していく。被災各地では必死の取り組みが重ねられている。NPOや社会企業家たちはその現場に寄り添い、復旧・復興、その先の新たな事業創造を支えるべく活動している。過去の世界に前例のない、急激な人口減少・高齢社会に向かいつつある私たちにとって、被災地の復興と新生はいまや新たな「希望」となっているのである。(せき・みつひろ)