内容
江戸末期に緒方洪庵らが開き、その後の天然痘予防の普及活動の拠点となった大阪の「除痘館」。 その活動記録「除痘館記録」は、洪庵が適塾を主宰し多くの人材を育成する一方、生涯かけて取り組んだものであり、今も緒方家に伝えられている。それは洪庵や大阪の除痘館活動の実態を明らかにするだけでなく、西洋医学の移入を通して人々を天然痘の災厄から救済し、解放する除痘館活動そのものの役割や、その近代化に寄与する様相を見事に描きだすものとなっている。 本書は第一部で「除痘館記録」の原本図版・翻刻・現代語訳・註と解説、第二部に論考を配し、幕末という当時の歴史的背景や具体相、あるいは洪庵を取り巻く状況や環境などを丁寧に解説することで、より多くの人々が緒方洪庵と除痘館事業の活動を再認識できるよう構成し、病いとの闘いに迫る。