内容
詩を生きる 詩と生きる詩を書くことに疲れてベッドに横になろうとする時刻、枯葉を踏む音がまっしぐらに近づいてくるのだ。男の家に向かって。はるか遠方から。そして書斎の窓から大きな頭部をさし入れると、机の上の書きかけの詩稿を読み始めるのだ。熱心に。かれはそのために遠い道のりをやってくるのだ。夜ごと夜ごと。そうして、読み終えると、ふたたび帰っていくのだ。森の奥へ。(「未明に訪れる者よ」)「それでもその人とその作品とをほんものと称揚せずにはいられない。詩人中上哲夫とは、なんと幸福な、いまいましい存在であることよ!」(高橋睦郎)。『下り列車窓越しの挨拶』から『ジャズ・エイジ』(詩歌文学館賞)まで、しなやかな抒情あふれる10詩集より精選。路上派の出発いらい半世紀の詩業を一望する。解説=辻征夫、八木忠栄、経田佑介、相沢正一郎