内容
月経、妊娠、出産、子育て……女のからだの喜びが、いのちと社会を支える。セクシャル・マイノリティの権利の主張は十分正しいが、一方で、マジョリティであるはずの男女は未婚とセックスレスが増加し、少子化の一途である。“仕事と家事・育児の両立”が喧しいが、問題は両立でも経済でもなく、男に抱きとめられ、性と生殖を担う女のからだの喜びが見失われていることである。見失われつつある女たちの家族への“祈り”と家での“働き”を、どうすれば今、肯定的に取り戻せるだろうか? ■「生の原基」とは (本文より) 「母性」とは、時代によって転変する社会的制度からしか考えられないものだろうか? 目の前で育ってゆく赤ん坊の求めるものときちんと向き合い、応えてゆく力が、今、見失われている。 「生の原基」(渡辺京二氏)というキーワードを軸に、いつの時代もかわらぬ、育ってゆく子どもという存在と、すべての人間にあらわれるはずの「母性」のありようを探る試みである。「あらゆる文明は生の原基の上に、制度化し人工化した二次的構築物をたちあげる。しかし、二〇世紀末から二一世紀にかけてほど、この二次的構築物が人工性・規格性・幻想性を強化して、生の原基に敵対するようになったことはない。一切の問題がそこから生じている。」(渡辺京二)