内容
不可視の詩の領域へススキが銀色になびく季節わたしはちちやははから生まれたのでしたけれども ちちやはははわたしから生まれたのでしたやはりススキが銀色にひかる季節でした高い山のすそ野でした(「ナナカマドの歌」)「田中郁子の詩は語り難い。たたずまいは地味なのに、底のほうに渋く華やかな弾力がある。岡山の自然がこの人の言葉を礎となって支えているが、そこから流れ湧いてくるのは霧のような哀しみである」(小池昌代)。父祖から継いだ山間の地から、生と死が白く輝く場所へ架橋する。代表詩集『紫紺のまつり』『ナナカマドの歌』『雪物語』全篇収録。戦後の苦難から辿りついた人間と自然の涯にある聖性。解説=粕谷栄市、新井豊美、岡島弘子、水島英己、新延拳