内容
国連人権理事会をはじめとする世界的な人種主義をめぐる議論においては、日本の部落問題は当然のごとくそのなかに位置づけられている。にもかかわらず、日本国内でまだその認識が薄い。しかし明治以後、部落問題は「人種が違う」といった「人種」のアナロジーとして常に語られてきた。そして、こういった語りは、まぎれもなく近代が創り出したものであり、部落問題はたんなる封建遺制ではなく、近現代社会が存続させてきたものである。本書は、明治から現代まで、様々な「部落」についての言説やその差別の思想・論理を丁寧に跡づけながら、国民化の語りのなかで人種主義(レイシズム)を形成し、部落差別を継続し続けてきた近現代日本社会のありようを問い直す。