内容
ロシアの「魂」に迫る! モスクワのクレムリン(城塞)は当初、あくまでも戦いのための構造物でしかなかった。ロシアの各地には今も様々なクレムリンが存在する。しかし、伝説と神話を宿し、今なおロシアの「心臓部」として鼓動を続けているのは、モスクワのクレムリンだけだ。政治・軍事・宗教が混然一体化したクレムリンは、ロシア人の欲望と祈り、そして恐れの結晶と言えるだろう。中世のモスクワ大公国からタタールのくびき、エカチェリーナ大帝、ナポレオン侵攻、革命と共産党独裁、ソ連崩壊、現代のプーチンまで……権力者と民衆、戦争と革命、建築と聖都など、陰影豊かに描く通史。 英国の歴史家である著者は、これまでもロシアやソ連の歴史の深層に迫る数々の名著を生み出してきた。モスクワのクレムリンを舞台に、権力者の興亡と民衆の姿を活写した本書でも、事物や現象の背後に透徹する視線と執念が随所にうかがわれる。波乱のロシアの歴史を、城壁の内外から権力者と民衆による双方向のまなざしで見つめ、見事な歴史絵巻に仕立て上げている。30年前、クレムリンに「一目で魅せられてしまった」と語る歴史家が、その「魔力」の正体を追い求めた旅路の記録とも言える。