内容
安泰で幸福であってこそ、家族――。広く信じられてきたこのイメージは、もはや幻想である。そのことは、親子、夫婦、兄弟姉妹の関係で悩む人が多い事実からも言えるだろう。「絆」や「愛」だけでは解決しない。私たちは、そろそろ、この現実と向き合わなくてはならない。無職の子どもと、親。「持てる世代」の親と墓守娘。引きこもりや依存症。経済的DV、離婚……。家族問題と長年とりくんできた臨床心理士の著者は、家族問題をとく鍵は、「お金」だと指摘する。本書において、豊富な事例とともに、問題の根幹、現代社会の影響を浮かび上がらせ、具体的な提言もこころみる。「信頼関係がなくなったとき家族の権力・支配構造があらわになる。そうであるなら、むしろそれを駆使し、活用して信頼関係の再構築ができないだろうか。お金の出し方を工夫し、操作して、息子や娘の回復を図る。その工夫を説明しているのが本書の特徴だ」とことんリアルな事例とともに、ありうべき展望を描く、信田さよ子の決定版家族論。