内容
巨大かつ強力な市場支配にいかに対峙すべきか? 異端派経済学者として名高いジョン・ケネス・ガルブレイス。彼は既成の通念にとらわれることなく、まず現実を直視し、その現実の分析ないし理解に必要と考える場合、自ら新しい概念を創造した点にユニークさと魅力がある。 『ゆたかな社会』では「依存効果」、『新しい産業国家』では「テクノストラクチュア」の析出というように、彼の概念は正統派経済学の狭い理論枠組を超えて、時代を鮮やかに切り取っていった。異端たるゆえんである。 こうしたなかでも『アメリカの資本主義』で打ち出された「拮抗力」という概念はとりわけ有名である。 古典派の体系では「競争モデル」が大前提となっているが、現実の経済を見ると、巨大企業の「寡占」が際立つ。これでは弱者は保護されず、経済的効率は落ちてしまうはずだが、現実はそうなっていない。この事実を説明するために彼は「拮抗力」という概念を案出するのである。 巨大な製造業に対しては巨大な流通機構で対抗するチェーンストアないし生協、大企業に対しては労働組合というように強固な「市場支配力」は対抗する「拮抗力」を生み出し、自ずから調整されるという。初期の名著の復刊!