内容
等身大のロベスピエールへ 「恐怖政治」でフランス革命を破滅に追い込んだ近代最初の独裁者か、それとも共和国の徳を謳い上げた「清廉の人」か。ロベスピエールを描くということは、「伝記」の極北を行く作業といえる。本書は、これまでの血腥さを伴ったロベスピエール伝からは距離をとり、「青年」ロベスピエールに着目する。 実際、従来のロベスピエール伝は、彼の短い36年の生涯のうち、最後の5年間を集中的に扱い、最初の31年は最後の5年間の「善行」なり「悪行」なりを性格付ける還元的役割しか与えられなかった。 しかし、本書によれば、ロベスピエールも「未来の可能性に鼓舞されるとともに不安に襲われた一人の若者」にすぎず、その歴史的役割は「1789年の時点では予期されてなどいなかった」。そして、新たな目で眺めると、一番重要なのは「31歳の誕生日の数日前、ヴェルサイユに辿り着いたこの男はいったい何者だったのか」という問い掛けになる。 こうしたスタンスは革命後の叙述にも変化を与えずにはおかない。本書では、ロベスピエールは「恐怖政治」の主導者というより、同時代人の多くと同じく革命によって破滅に追い込まれた人物として現れることになる。革命史研究の世界的権威による決定版評伝。