クァジーモド全詩集(岩波文庫 37-702-1)
河島 英昭 著
内容
目次
第一詩集 『そしてすぐに日が暮れる』(一九二〇-四二年) 「水と土」 (一九二〇-二九年) そしてすぐに日が暮れる ティンダリを吹く風 天使たち そしてあなたの衣裳は白い 樹木 白羊宮 死んだ水 土 日は傾き 宇宙 古代の冬 見知らぬものたちの苦しみ 季節の風が吹き過ぎるのを聞いた 死者たち かつてこれほど明るい夜があなたを圧倒したことはなかった あなたは一つの命を呼ぶ 爽やかな海辺 鏡 誰もいない 小路 貪欲にもぼくは手をひらく 帰郷 夜の小鳥たちの隠れ家 仲間さえぼくを見棄てる ぼくのなかで失われていったすべての形が 「沈んだ木笛」(一九三〇-三二年) 沈んだ木笛 ユーカリの木 ぼくの土地で 歌の誕生 草のやすらぎ 古代の光の渦巻くなかを 言葉 花々のなかに倒れていた乙女の 小さな曲線の ぼくのなかで埋葬された者が唄いだす 道連れ ある修道士の聖像の嘆き 死の記憶も失せたころ 雨への祈り 秋 ローヤの河口 森は眠る 夜に 耐え忍ぶ一日を 骨壺のなかの聖者の変身 新たな無垢をとおってぼくに降りてきた 島 死者たちが目を見開いているところへ ぼくに夜明けを与えよ 恢復期 天使 隠れた命 廻(めぐ)る星座と静けさとが 闇と高さで作られている 水は山鼠(やまね)たちを腐らせて 種 初めの日 緑に漂う 睡りの川に洗われて 雌雄同体の蚯蚓(みみず) 木立ちの苦しみの形 悪を育む アルビスの日曜日のためにアーメン 「美神と魔王」 (一九三二-三六年) 美神(エーラト)に捧げる歌 魔王(アポツリオン)の歌 魔王(アポツリオン) アーナポ川 死んだ青鷺 《白土(テッレ・ビアンケ)》の丘の上で あなたの光に難破して 不眠症 沿岸には時おり ユリシーズの島 冬の塩田 サルデーニャ島 空の光るなかに 石窟(ラトミーエ) 生身の匂いをたてながら まさに人間的な瞬間に 異国の町 死の感覚のさなかで 神話の罪びと 「新詩篇」(一九三六-四二年) 鵲(かささぎ)が笑う、黒ぐろとオレンジの茂みに アグリジェントの道 丘は優しく 何をしたいのだ、空の牧人よ? イラーリア・デル・カッレットの石彫のまえで いま、日が昇る 雨はすでにぼくらを取り囲み ある晩、雪が フォンターナ広場 空をゆく帆影 ランブロの川岸で マージノの谷間の夕べ 舞踊家クマーニに捧げる悲歌(エレゴス) デルポイの女 喜びの模倣 月と火山の馬 なおも緑の川が 聖(サント)アンティーオコの浜辺 早くも痩せた花は飛び去る 青春の始まり 第二詩集 『来る日も来る日も』(一九四二-四五年) 柳の枝に 便り 一九四四年一月十九日 雪 来る日も来る日も おそらくは心が 冬の夜 ミラーノ、一九四三年八月 城壁 おおわたしの可愛い動物たちよ おそらくは墓の上に書かれて 彷徨(さまよ)うわたしに ベルガモ・アルタの砦から アッダ川の辺(ほとり)で またも海鳴りがする 悲歌 もう一人のラザロ 渡し場 あなたの足が音もなく わたしの時代の人間 第三詩集 『この世は夢でない』(一九四六-四八年) 南を偲ぶ哀歌 ビーチェ・ドネッティに捧げる墓碑銘 対話 雨と鉄の色 恋歌(マドリガル)によせて 主の年一九四七 イタリアはわたしの国 不死の死 母への手紙 第四詩集 『萌えゆく緑と散りゆく緑』 (一九四九-五五年) 「萌えゆく緑と散りゆく緑」 死んだギター 死と戦う女 萌えゆく緑と散りゆく緑 遠い都会で 「シチリアから」 何と長い夜か 波打つ丘の彼方に サラセンの塔の近くで、亡き弟のために アグリジェントのゼウス神殿 「樹々が倒れて城壁が崩れ落ちたとき」 讃歌 ロレート広場の十五人へ アウシュヴィッツ チェルヴィ兄弟たちに、彼らのイタリアに 「警句詩」 ある敵の詩人に 黄金の網から 第五詩集 『比類なき土地』(一九五五-五八年) 「見えつ、隠れつ」 見えつ、隠れつ 比類なき土地 今日は三月二十一日 歪んだ自然から 開かれた弧 青銅の壺 父に スカーラ家歴代墓廟(ぼびょう) 精神の身振りか名前か 「さらなる地獄について」 壁 この都会には さらなる地獄について 三面記事 警句に似せて 兵士たちは夜に泣く 「ギリシアにて」 アクロポリスの丘の夜 ミュケーナイ アルペイオスの流れを伝って デルポイ マラトーン クノッソス宮殿のミーノタウロス エレウシース 「問いと答え」 新しい月に 一つの答え 別の答え 第六詩集 『与えることと持つこと』(一九五九-六五年) 与えることと持つこと ヴァルヴァーラ・アレクサンドローヴナ ただ愛があなたを正しく撃ったとき 九月のある夜 イーザル川に沿って バラトンの岸辺で トルブリッジ ハーレムの黒人教会 カリアクラ岬 沈黙はわたしを欺かない グレンダルー トスカーナ地方の石弓の射手 チスウィックの墓地で メリダのマヤ族 スパイに贈る言葉 愛の詩篇 何ものも失わなかった この島では リグーリアに 感知できない時間 世界の均衡を保つには一日があればよい 花々は飾られているが夜更けには招き入れるポプラの樹々を 「碑文二篇」 マルツァボットに斃れた者たちへの碑文 ヴァレンツァのパルチザン兵士への碑文 詩について 詩人と政治家 訳 注 解 説 あとがき 『クァジーモド全詩集』編纂のために使用した文献 主要参考文献 年 譜