内容
本書は美術科教育学会から創刊された美術教育学叢書の最初の巻である。美術教育の理論研究の現在を、その研究の最前線に探り、1970年代以降の美術教育学の成果と到達した地平を示すために本書は編まれている。美術教育学という理論研究がおかれている歴史的位置=現在を研究に関わる者が共有し、美術教育の現在から理論を生み出し、美術教育の現在へと過去の研究成果を還していくために、本書は七つの文脈にそれぞれ二つの論を配した14の章で構成されている。 創刊の辞 [水島尚喜] 序章 美術教育学の現在を共有するために [永守基樹] 第1章 美術教育と「能力」論 [ふじえみつる] 第2章 教育改革と学力・能力論の現在 [藤原智也] 第3章 美術教育課程論への焦点:教育課程と学習指導要領の視座 [奥村高明] 第4章 美術教育におけるカリキュラム・デザイン:「逆向き設計」による単元作成の可能性 [岡崎昭夫] 第5章 図画工作・美術科における授業研究再考:各位相間の乖離あるいは齟齬の問題をめぐって [新井哲夫] 第6章 美術科教育の学習論と実践理論の拡張:学習論・ワークショップ・インクルージョンの関連動向から考える [笠原広一] 第7章 現代におけるデザイン・メディアの変貌と学びの変容:「モノ」・「コト」の越境と統合 [茂木一司] 第8章 つくる教育の組みかえの可能性:近代と工芸の諸相から [佐藤賢司] 第9章 美術科を他分野の研究から検討する:文化理論そして心理学から [神野真吾] 第10章 20世紀から21世紀への美術教育理論の展開:モダンからポストモダンへの転換期に着目して [山木朝彦] 第11章 美術教員養成論の課題と展望:教科専門(制作)の在り方をめぐって [大嶋 彰] 第12章 美術教員の養成における美学・美術史・美術批評の位相 [小野康男] 第13章 教育現場の美術教育研究は如何に可能か:東京都図画工作研究会の研究の動向と概要 [辻 政博] 第14章 教育現場の研究と学会における学術研究の豊かな関係性とは: 美術教育実践における「遊び」をめぐる実践・研究からの示唆をふまえて [宇田秀士]