日本の障害差別禁止法制~条約から条例まで~
池原 毅和 著
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目次
『日本の障害差別禁止法制―条約から条例まで』 池原毅和(弁護士、日本障害法学会理事) 著 はしがき ◇第1章 日本の障害差別禁止法の全体像◇ ◆第1節 障害差別禁止法の全体像 1 障害差別禁止法の法源 (1) 権利条約の批准と障害差別禁止法制の整備 (2) 憲 法 (3) 権利条約 (4) 基本法、差別解消法、雇用促進法(差別禁止3法) (5) 雇用促進法の適用除外と国家公務員法等の適用 (6) 基本方針、対応要領 (7) 差別禁止条例 2 障害差別禁止法制の法解釈の枠組み (1) 権利条約による憲法規範の意味充填 (2) 権利条約の解釈 (3) 差別禁止3法の解釈 (4) 差別禁止条例の解釈 ◆第2節 障害差別禁止法の類型化 1 救済方法からみた類型化(行政救済型と司法救済型) 2 法分野からみた類型化(憲法型、刑事法型、社会福祉法型、民事法型、行政指導法型) ◇第2章 権利条約の基本理論と基本条項◇ ◆第1節 権利条約と障害モデル論 1 障害モデル論 (1) 障害構造の理解の仕方とモデル論 (2) モデル論と障害のある人の権利 (3) 社会モデルから人権モデルへ 2 権利条約と人権モデル ◆第2節 権利条約における差別のモデル論と形態論 1 差別者差別観から被差別者差別観へ 2 均等/均衡モデル(differentiation model)と反従属化モデル(anti-subordination model) (1) 均等/均衡モデル (2) 反従属化モデル (3) 比較論の超克 (4) 包括的平等(inclusive equality) 3 差別形態論 (1) 権利条約と差別形態論 (2) 直接差別 (3) 間接差別 (4) 合理的配慮の不提供 (5) 関連差別 (6) 起因差別(discrimination arising from disability) (7) 構造的・体制的差別(structural or systemicdiscrimination) (8) ハラスメント、虐待、拷問等 ◆第3節 複合差別・交差差別 1 複合差別と交差差別の意義) (1) 複合差別と交差差別の定義 (2) 単一差別禁止事由アプローチ(single ground approach)と交差差別 2 交差差別禁止に関する国際人権規範の発展 3 交差差別を障害差別禁止法に規定すべき締約国の義務 ◆第4節 法的能力の平等 1 法的能力(legal capacity)と権利能力および行為能力 (1) 「法的能力」の解釈 (2) 法的能力の制限が内包する差別性 (ⅰ) 法的能力の測定技術の限界と成年後見制度の差別性 (ⅱ) 精神的能力(mental capacity)を支える社会的基盤の偏り 2 支援付き決定の意義 (1) 法的能力行使のための支援の諸実践 (ⅰ) インテンショナル・ピア・サポート (ⅱ) ファミリー・グループ・カンファレンス (ⅲ) オープン・ダイアローグ (ⅳ) サポーティッド・ディシジョン・メイキング (ⅴ) マイクロ・ボード (2) 意思理論のパラダイム転換 (ⅰ) 意思の個人モデルとその変遷 (ⅱ) 意思の社会モデルへの転換 (ⅲ) 意思の社会モデルと支援付き決定 ⅰ)支援付き決定への完全転換 ⅱ)支援の視点の転換 (3) 決定支援に対する濫用防止措置 3 現代的な契約と成年後見制度 (1) 権利条約と成年後見制度利用促進法 (2) 成年後見制度の活用領域の限定 (ⅰ) 消費者法によるユニバーサルな解決手法(脆弱性スペクトラム) ⅰ) 個人属性に着目する法理 ⅱ) 障害の社会モデルに親和的な法理 (ⅱ) 福祉サービス受給契約の制度的契約性と権利擁護のあり方 (ⅲ) 医療契約 (ⅳ) 最後の手段(the last resort)としての成年後見制度 ◆第5節 身体の自由と地域生活の権利 1 身体の自由(14条) (1) 障害に基づく自由剥奪の禁止(14条1項b後段) (ⅰ) 自由保障における差別の禁止 (ⅱ) 疾病・障害の二分法の否定 (2) 恣意的拘禁等の禁止(14条1項b前段) 2 自立した生活および地域社会への包容(19条) (1) 自立した生活の権利と地域社会に包容される権利(19条柱書) (2) 特定の生活様式からの解放(19条a項) (3) 個別的な支援サービスと一般的な支援サービス(19条b、c項) ◆第6節 人権モデルと社会権 1 人権モデルによる社会権実現形態の修正) 2 人権モデルによる教育を受ける権利の実現形態の修正 (1) 教育を受ける権利とインクルーシブ教育 (ⅰ) 社会権としての教育を受ける権利と教育形態 (ⅱ) インクルーシブ教育の意義 (ⅲ) インクルーシブ教育の規範的構成要素 ⅰ) 価値基準(Values) ⅱ) 原則(Principles; 4As原則) ⅲ) インクルーシブ教育実現に向けて (2) 権利条約の規範的要請 (ⅰ) インクルーシブ教育の普遍性(24条1項) (ⅱ) インクルーシブ教育実現のための締約国の義務内容(24条2項) (ⅲ) 言語とコミュニケーション技能の習得(24条3項、4項) (ⅳ) 生涯にわたる教育への平等なアクセスの保障(24条5項) (3) 特別支援教育とインクルーシブ教育 3 人権モデルによるその他の社会権実現形態の修正 (1) 無差別原則(non-discrimination) (2) インクルージョン(包容) (3) 尊厳および自律の尊重 (4) 文化的・言語的同一性の尊重 (5) 障害予防対策への視点 ◆第7節 権利条約の履行と履行の促進・保護・監視 1 3つの機関・機構の関係 2 履行のための中心的機関と調整機構(33条1項) 3 履行の促進・保護・監視のための機構(33条2項) 4 地域人権機関 5 日本の現状 ◇第3章 行政手法による差別禁止法◇ ◆第1節 基 本 法 1 障害福祉施策基本法から障害施策基本法へ 2 基本理念法から基本原則法へ 3 障害と障害者の定義 4 禁止される差別の成立要件(4条1項) (1) 障害者に対する行為であること (2) 障害を理由とすること (ⅰ) 直接差別、間接差別、起因差別、関連差別 (ⅱ) 構造的差別・体制的差別 (ⅲ) 複合差別・交差差別 (3) 差別行為であること (ⅰ) 区別、排除または制限であること (ⅱ) 差別意図の要否 (ⅲ) 権利利益の侵害の要否 5 合理的配慮義務の成立要件(4条2項) (1) 個々の障害者との個別具体的関係で社会的障壁の除去が必要であること (2) 必要かつ合理的な配慮であること (3) 義務者の負担が過重でないこと (ⅰ) 社会的障壁を除去すべき社会関係にある者であること (ⅱ) 作為義務が義務者に過重負担ではないこと ⅰ) 過重負担の法的性質 ⅱ) 負担の過重性の基準 (4) 合理的配慮を求める意思の表明(申し出)の要否 (5) 合理的配慮義務と差別禁止の関係 (6) 合理的配慮義務の法的義務性 6 差別禁止規定(4条)違反に対する救済方法 ◆第2節 差別解消法 1 差別と合理的配慮 (1) 禁止される差別の成立要件 (ⅰ) 差別解消法による付加要件 (ⅱ) 正当化要件 (2) 合理的配慮義務の成立要件 (3) 差別禁止規定(7条、8条)違反に対する救済方法 (ⅰ) 行政機関等について (ⅱ) 事業者について 2 差別解消のための支援措置 (1) 紛争の防止・解決体制の整備(14条) (2) 啓発活動(15条) (3) 情報収集・整理・提供(16条) (4) 障害者差別解消支援地域協議会(17条ないし21条) ◆第3節 雇用促進法とその適用除外者 1 雇用促進法の差別禁止規定 (1) 差別禁止と合理的配慮義務 (ⅰ) 禁止される差別の成立要件 ⅰ) 募集・採用時の差別禁止の要件(34条) ① 事業主であること ② 労働者の募集および採用について行う行為であること ③ 障害者に対する行為であること a.障害者の定義 b.関連差別との関係 ④ 「障害者であることを理由として」の文言の欠如の意味 ⑤ 障害者でない者と均等な機会を与えないこと ⑥ 正当化要件 ⅱ) 労働契約締結後の差別禁止の要件(35条) ① 34条との共通要件 ② 賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇についての取り扱いであること a.「その他の待遇」について b.最低賃金との関係 ③ 労働者が障害者であることを理由とすること a.労働者であること b.障害者であることを理由とすること ア.差別禁止事由としての障害者 イ.禁止される差別形態 ④ 障害者でない者と不当な差別的取扱いであること ⑤ 正当化要件 (ⅱ) 合理的配慮義務の成立要件 ⅰ) 募集・採用時の合理的配慮義務(36条の2) ① 事業主が労働者の募集および採用について行なう措置であること ② 均等な機会の確保の支障になっている事情の改善に必要な措置であること ③ 募集および採用に当たって障害者から申し出があること ④ 障害の特性に配慮した措置であること ⑤ 事業主に対して過度の負担とならないこと ⅱ) 労働契約締結後の合理的配慮義務(36条の3) ① 事業主であること ② 障害者である労働者であること ③ 均等な待遇の確保または能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために必要な措置であること ④ 障害の特性に配慮した措置であること ⑤ 職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の措置であること ⑥ 事業主に対して過度の負担とならないこと (ⅲ) 救済方法 ⅰ)自主的解決方法 ⅱ)行政指導による方法 ⅲ)紛争解決の援助 ① 都道府県労働局長による助言、指導または勧告(74条の6) ② 紛争調整委員会による調停(74条の7、74条の8) (2) 積極的差別是正措置 2 雇用促進法の適用除外者(国家公務員、地方公務員、国会職員、裁判所職員、自衛隊員) ◆第4節 障害者虐待防止法 1 障害者虐待防止法の概要 2 差別禁止法制としての評価 (1) 行為類型の課題 (2) 行為者類型の課題 (3) 予防、救済方法の課題 ◆第5節 差別禁止条例 1 差別禁止条例の役割 2 差別禁止条例による上乗せと横出し (1) 障害・障害者の定義の拡張 (2) 差別形態の拡張 (3) 適用対象の拡張(事業者性の除去) (4) 合理的配慮義務の法的義務化と意思表明要件の緩和 (5) 生活領域ごとの規定の詳細化 (6) 救済方法の強化 ◇第4章 救済方法(Remedy)◇ ◆第1節 差別是正・撤廃のための国家の保護義務と救済方法 ◆第2節 差別禁止法の民事法的効力 1 不法行為法および契約法と平等権保護 2 私法領域における救済と是正 (1) 差別的な契約拒否に対する救済 (ⅰ) 契約等の差別的な拒否と公開性・公共性(open orprovide to the public)法理 ⅰ) 公開性・公共性(open or provide to the public)法理 ⅱ) 裁 判 例 a.ゴルフクラブの公開性が入会拒絶の許否を分けた裁判例 b.公開性・公共性に着目した裁判例 ア 店舗における集客の公開性 イ 交通機関 ウ 娯楽・レクリエーション施設 エ 加盟店契約 c.合理的期待に着目した裁判例 ⅲ) 学 説 (ⅱ) 損害賠償責任に基づく間接的強制力 (ⅲ) 締約強制の可能性 ⅰ) 差別的な条件の無効化による契約成立の可能性 ⅱ) 一般的な締約強制の可能性 a.ドイツ民法と締約強制論 b.差別禁止法制と締約強制 (2) 契約内容の矯正 (ⅰ) 一部無効による矯正 (ⅱ) 合理的配慮による契約条項等の矯正 ⅰ) 契約条項の不適用 ⅱ) 契約に定めのない合理的配慮の補充 a.私人間の契約関係における合理的配慮義務の位置づけ b.私人間の契約関係における合理的配慮実現のための対話・協議義務 (3) 規範的要件の要素としての差別禁止 (ⅰ) 不法行為法と差別禁止法 (ⅱ) 労働契約法と差別禁止法 ⅰ) 労働法における間接適用関係 ⅱ) 裁判例(合理的配慮義務の間接適用) a.就業規則の解釈に基づく合理的配慮義務 b.労働契約における信義誠実の原則に基づく合理的配慮義務 c.「債務の本旨」に基づく合理的配慮義務 d.公序良俗に基づく合理的配慮義務 e.権利濫用に基づ