内容
「引く」日葡辞書から、「読む」日葡辞書へ――
日葡辞書は、なぜ全体の4分の1が「補遺」なのか。
なぜ序文を2度重ね刷りしたのか。
全編ローマ字の日葡辞書で、イッシン(一親、一身、一心)を書き分けた方法は。
日本語学のみならず、版本書誌学・文献学にも貴重な示唆・新見に富む清新な論考と、訪書の静かな亢奮を伝えるコラムを収録。
1)日本文化を知る一級資料の入門書として
400年前の中世日本語や生活風俗など、歴史・文化・言語を知る第一級資料・日葡辞書。宣教のために編纂された日葡辞書を利用する上での注意事項とは。一般向けの序章23ページを付し、日本語の歴史になじみのない読者が日葡辞書を利用する上での基礎知識を伝授する。
2)辞書編纂の現場へのいざない
170点を超す多数の図版とともに、豊富な事例を具体的に例示。印刷活字種の違いは何を意味するのか等、詳細な原本調査をふまえ、日葡辞書がどのように編纂されたのか、当時の辞書編纂の舞台裏を垣間見る。
3)全文電子化データを駆使した客観的な分析
本篇2万7000語、補遺篇6000語の語彙を収録する日葡辞書について、全文電子化された本文を統計的に分析。用例として示される日本語中、99%が辞書の見出し語として立項されていることを論証。日葡辞書の編纂方針をあざやかに解き明かす。
4)新村出研究奨励賞を受賞した高い評価
本書の核となる論文類は、新村出研究奨励賞(2018年)を受賞し、すでに学界できわめて高い評価を受けている。高い学術性を保ちながらも理解しやすい文章で、日本語学研究者だけではなく、キリシタン文化史、辞書編纂史、多言語交渉史、書誌学の関心に応える必読の書。