著者紹介
アン・アプルボーム(著者):1964年生まれ。米国出身の歴史家、ジャーナリスト。『グラーグ ソ連集中収容所の歴史』(白水社)でピュリツァー賞受賞。本『鉄のカーテン 東欧の壊滅1944-56 上下』(白水社)で全米図書賞最終候補、クンディル歴史賞受賞。
三浦 元博(翻訳):1950年生まれ。共同通信社を経て、現在、大妻女子大学社会情報学部教授。主要訳書『東欧革命1989』『レーニンの墓 上・下』『情報戦のロシア革命』『ヤルタからヒロシマへ』『廃墟の零年1945』『レーニン 愛と権力 上・下』『地獄の淵から ヨーロッパ史1914-1949』『分断と統合への試練 ヨーロッパ史1950-2017』『戦時リーダーシップ論』(以上、白水社)ほか。
内容
トランプとトランプ主義を可能にしたものは何なのか?
米国のトランプ政権下で進んだ民主政治の衰退と権威主義の台頭、イギリスのジョンソン首相とブレグジット、ポーランドの「法と正義」のカチンスキ、ハンガリーの「フィデス」のオルバーンといった元首の登場、ドイツ・フランス・スペインにおける極右政党の躍進……これらは同じ時代の土壌から生まれたものだと理解できるが、この世界的な現象の根底には何があるのか?
本書は、『グラーグ:ソ連集中収容所の歴史』で〈ピュリツァー賞〉を受賞した歴史家・ジャーナリストが、かつて交流があった「リベラル派」の人々の変貌ぶりに驚き、何が彼らを変えてしまったのかを起点に論考する、思索的エッセイだ。ハンナ・アーレントの『全体主義の起源』を現代世界にあてはめて「民主政治の危機の根源」を考察し、「わたしたちはすでに民主政治の黄昏を生きている可能性がある」と警鐘を鳴らす。欧米における「権威主義の誘惑」は、むろん鏡像として、日本の現状を見ることもできる。
本書は『ワシントン・ポスト』『フィナンシャル・タイムズ』の「年間最優秀書籍」に選出された。特別寄稿「日本語版への序文」を掲載する。