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寺田寅彦「藤の実」を読む
山田功,
松下貢,
工藤洋,
川島禎子,
寺田寅彦,
平田森三
著
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在庫状況
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お届け予定日
10日間
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価格
\2,200(税込)
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発行年月 |
2021年12月 |
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言語 |
日本語 |
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媒体 |
冊子 |
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ページ数/巻数 |
8p,119p 図版12p |
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大きさ |
20cm |
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ジャンル |
和書/生命科学、医学、農学/生物学/植物学 |
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ISBN |
9784908941313 |
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商品コード |
1034110858 |
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NDC分類 |
470.4 |
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基本件名 |
藤の実 |
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個人件名 |
寺田/寅彦 |
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本の性格 |
学生用 |
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新刊案内掲載月 |
2022年02月2週 |
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商品URL | https://kw.maruzen.co.jp/ims/itemDetail.html?itmCd=1034110858 |
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著者紹介
山田功(著者):1941年、名古屋市生まれ。愛知県立高校教員(物理)を経て現在、寺田寅彦記念館友の会副会長、および中谷宇吉郎雪の科学館友の会幹事。主な著書に『教科書に掲載された寺田寅彦作品を読む』(リーブル出版)、『本と私』(岩波新書、「寺田寅彦の自想本」を執筆)がある。2006年に「セロファンで折った雪の結晶を偏光板でみる装置」で学研科学大賞奨励賞を受賞。2019年には写真展「彩氷」(薄氷の偏光写真)を中谷宇吉郎雪の科学館で開いた。
松下貢(著者):1943年生まれ。東京大学大学院理学系研究科物理学博士課程修了。理学博士。日本電子開発部、東北大学助手、中央大学教授を歴任。中央大学名誉教授。専門は複雑系科学。主な編著書に、『統計分布を知れば世界が分かる―身長・体重から格差問題まで』(中公新書)、『フラクタルの物理Ⅰ・Ⅱ』『物理学講義』シリーズ(裳華房)、『生物に見られるパターンとその起源』(東京大学出版会)などがある。趣味は簡単な肴を作り、ハタハタ寿司、豆腐のもろみ漬けなどの発酵食品はネットで取り寄せ、全国各地の地酒で家飲みすること。
工藤洋(著者):1964年生まれ。京都大学大学院理学研究科植物学専攻博士課程修了。博士(理学)。米国スミソニアン環境研究センター研究員、東京都立大学理学部生物学科助手、神戸大学理学部生物学科准教授を歴任。京都大学生態学研究センター教授。専門は植物生態学、分子生態学、植物の季節応答のしくみを研究。主な編著書に『エコゲノミクス―遺伝子から見た適応』がある。趣味は登山と自然観察。
川島禎子(著者):1976年生まれ。筑波大学大学院博士課程人文社会科学研究科修了。文学博士。現在、高知県立文学館主任学芸員。専門は明治文学。共著書に『科学絵本 茶わんの湯』(窮理舎)がある。高知県立文学館では、紀貫之から有川ひろまで、高知の独特な風土が生み出した多士済々な文学者の資料をローテーション方式で展示し、さらに寺田寅彦記念室、宮尾登美子の世界などの特別室を設けている。
寺田寅彦(著者):1878~1935年。物理学者、随筆家。東京帝国大学理科大学教授、航空研究所兼任、理化学研究所研究員、東京帝国大学地震研究所所員を歴任。熊本第五高等学校時代に夏目漱石に俳句の指導を、田丸卓郎にバイオリンの影響を受ける。ミクロからマクロまで多くの自然現象に深い関心を持ち、複雑系や形の科学の流れを先取りするスタイルで研究を進めた。物理の本質を見抜く洞察と科学的精神はルクレチウスを彷彿する。豊かな表現力で創作された数々の随筆作品は日本文学でも高く評価されている。晩年は特に、松根東洋城と小宮豊隆との俳諧連句の作を多く残した。この他、絵画や音楽、写真、映画など芸術へ注いだ情熱も高かった。これらの衣鉢は、中谷宇吉郎をはじめ、平田森三、宇田道隆、藤原咲平、藤岡由夫、坪井忠二、矢島祐利、渡辺慧といった多くの門下に受け継がれた。主な著書は『藪柑子集』『冬彦集』『蒸発皿』『万華鏡』『物質と言葉』『地球物理学』『海の物理学』(ローマ字書き)など多数。郷里の高知県高知市には「高知県立文学館 寺田寅彦記念室」や「寺田寅彦記念館」がある。
平田森三(著者):1906~1966年。物理学者。東京帝国大学理学部物理学科卒業。理化学研究所研究員、東京帝国大学工学部講師、東京帝国大学理学部助教授、東京帝国大学第二工学部教授、東京大学理学部教授、東京大学生産技術研究所教授併任(1951年~)、宇宙線観測所初代所長、東京大学低温センター初代センター長、日本物理学会会長、応用物理学会会長を歴任。寺田寅彦の薫陶を受け、その物理研究の伝統でもある「割れめ」の研究や独自の統計的手法に基づく研究で成果を挙げた。特に、「キリンの斑模様」や「捕鯨用の銛に関する研究」(「平田銛」の発明)においては、その観察眼と洞察の深さを見事に発揮した。寅彦から受け継いだ「割れ目と生命」の問題は、「キリンの斑模様」から「藤の実の射出」「藤の莢の剛性」を経て「うずら豆の模様」へと発展していった。研究以外にも、研究所や学会などの創設にも尽力し、その発展に貢献した。主な著書は、『キリンのまだら―自然界の統計現象』(中央公論社、現中央公論新社)(2003年に早川書房より表題の一部を変え文庫化)などがある。
内容
ある日、寺田家の庭で起きた藤の実の一斉爆発、同じように上野の清水堂で遭遇した銀杏の一斉落葉、そして同時期に起きた娘の怪我や家族の事故…。随筆「藤の実」は、これら一連の出来事を通して、寺田寅彦が物事の偶発する「潮時」について考察をめぐらした短い作品です。
本書では、この名品を物理学、植物学、文学(俳諧論)のそれぞれの立場から現代的な視点で読み直し、その本質を問い直します。関連付録には、寅彦門下 平田森三が書いた入門記事のほか、随筆の背景がわかる同時期の寅彦作品(スケッチ入り)も数篇収録。寅彦日記や書簡から読み解いた詳しい注釈も付け、口絵では、著者の一人が実際に藤の実の射出実験をした記録写真や、寅彦の論文草稿・メモの写真も紹介します。
「藤の実」では、流感の流行や地震の群発、山火事の多重発生、その他、事件事故の多発など、「縁起が良くない」だけでは説明のつかない様々な出来事についても寅彦流の鋭い視線が注がれます。偶然と必然の間に潜むものとは何か、本書は、物事の「潮時」に切り込んだ寺田物理学のエッセンスと寅彦の自然観に迫ります。本随筆は国語教科書にも載った寅彦作品です。
「寅彦のこの随筆の趣旨は、自然界や日常生活で引き続いて起きるいろいろな現象や事件が偶然なのか必然なのかという率直な疑問の提起である。」(本書「まえがき」(松下貢)より)