著者紹介
安岡 孝司(著者):1985年みずほ情報総研(旧富士総合研究所)入社。金融技術開発部部長などを経て、2009年芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授(2019年まで)。社会人学生向けに企業リスク管理、企業財務、財務分析、金融工学などの講義・演習を担当。大阪大学理学部数学科卒、神戸大学大学院理学研究科修了、九州大学大学院理学研究科中退。博士(数理学、九州大学)。著書に『企業不正の研究』(日経BP)、『企業不正の調査報告書を読む』(日経BP)、『Corporate Fraud in Japan』(Cambridge Scholars Publishing)、『Interest Rate Modeling for Risk Management』(Bentham Science Publishers)、『LINEとメルカリでわかるキャッシュレス経済圏のビジネスモデル』(日経BP)、『債券投資のリスクとデリバティブ』(大学教育出版)、『市場リスクとデリバティブ』(朝倉書店)、『戦略的技術経営入門』(芙蓉書房出版、共著)などがある。
内容
無理な目標、職場の格差、多重兼務、権限長期化…
「デキる社員」が不正の温床
防御のカギは現場が握る!
完成検査員以外の検査員が完成検査を実施するなどしていた日産自動車、鉄道車両用空調装置の一部で購入仕様書の記載とは異なる検査を実施したり検査自体を実施しなかったりしていた三菱電機…。日本を代表する名門企業で大規模な品質不正事件が相次いでいる。
こうした品質不正の典型的なパターンは、経営陣が無理な業績目標を立てることから始まる。結果、現場に無理を押し付けて、「問題があれば現場で解決せよ」と圧力をかける。このような会社では無理な業績目標を達成するために、生産性を重視する一方で、無理な人員削減を実施する。すると当然のことながら、生産計画にはゆとりがなくなり、そのしわ寄せが検査部門へと波及。そこは、検査体力の弱い体制になり、品質不正に手を染める。しかも、こうした検査部署の人員配置は大概固定的なため、閉鎖的な組織となって品質不正を隠しやすくなっている。
本書では、こうした品質不正が起こる背景・理由を分析しながら、現場のマネージャーや技術者が品質不正に陥らないためのポイントを解説する。