ルソーの政治経済学~その現代的可能性~
鳴子 博子 著
内容
目次
はしがき 凡例 第1章 自然・人間・労働――ルソー対マルクス 1.手がかりとしての「手の労働」 2.労働の原初的展開――自然と人間・人間と人間の関係 3.労働概念――労働の構造と過程 4.人格とは〈時間・労働・労苦〉である ◆コラム1 『人間不平等起原論』――ルソーは人類の歴史をどう描いたか ルソーの略歴と『人間不平等起原論』 自然法に反する不平等 歴史批判が準備する人類の未来への挑戦 第2章 一般意志で動く国家――ルソー/ヘーゲル/マルクス 1.各人に属するものを各人に返す「人間の正義」 2.ヘーゲル批判――一般意志は普遍意志ではないこと 3.一般意志の導出 4.「あるがままの人間」論批判――一般意志の目的 5.一般意志はなぜ誤らず破壊されえないのか 6.固有の力をめぐって――ルソー/マルクス ◆コラム2 『社会契約論』――「意志は代表されえない」 ルソーへの弾圧とフランス革命期の受容 われわれ全員が奴隷であること 平等が先になければ自由は存続できない 第3章 ルソーの人民集会論とフランス革命――ルソー対ロベスピエール 1.フランス革命期に一般意志は見出せるのか 2.1789年夏――議会での闘い 3.ヴァルレの命令的委任論 4.「ルソー=ジャコバン=全体主義」は正しいのか 5.現在と未来に開かれたルソーの体系 ◆コラム3 代議制と受動性――フィヒテ・ルナン・第三帝国 「代議制こそが独裁制を生む」 ナチス「意志の勝利」 フィヒテ「ドイツ国民に告ぐ」 ルナン「国民とは何か」 受動から能動へ 第4章 経済的自由と生存権の起原――ル・シャプリエ法を通して 1.ル・シャプリエ法とルソーの中間団体否認論 2.エタンプ事件の現場とその背景 3.生存をめぐる民衆の直接行動 4.ルソー的視座から見た捉え直し 5.富者の「巧妙な簒奪」が社会を分断させた ◆コラム4 書評:『市民法理論』 (シモン・ランゲ著,大津真作訳,京都大学学術出版会,2013年) ランゲの生涯と18世紀フランス 社会は暴力から生まれた 日雇い労働者は奴隷より悲惨である 第5章 討論と投票,団体と個人――ミル対ルソー 1.ルソー的直接民主主義と現代 2.巻町の住民投票 3.「あるがままの人間」はいかに変貌したのか――沖縄県民投票と対比して 4.現代デモクラシーにおける住民投票の位置づけ 5.アソシアシオンと個人の可能性 ◆コラム5 選択的夫婦別姓と習俗 まずいコーヒー・おいしいコーヒー 習俗の弁別――伝統と非伝統 当事者(女性)の意識と行動 第6章 既存宗教・市民宗教は人間を自由にするのか 1.宗教を発展する人格から捉える 2.道徳 3.自然宗教 4.福音書の宗教 5.市民宗教 6.既存の宗教・既存の国家から人間を自由にする宗教 第7章 権力・戦争・歴史――フーコー対ルソー 1.パトリオティスム・ナショナリスム・コスモポリティスム問題 2.フーコーとルソーの権力論 3.フーコーとルソーの戦争観・歴史観 4.ルソーのアソシアシオン(国家)の創設 5.なぜルソーは人間愛より祖国愛を選ぶのか ◆コラム6 「戦争をする国家」から「戦争をしない国家」へ――プラトン対ルソー 国家の組成がそもそも悪かったこと プラトン国家vs ルソー型国家 暴力と性差 市場型プラトン国家vs ジェンダー平等ルソー型国家 第8章 ヨーロッパ新秩序構想――18世紀から現代へ 1.拒否権を通して国家のあり方を問い直す 2.自由拒否権と祖国ポーランド 3.国王の拒否権とフランス革命 4.イギリスのEU 離脱国民投票と現代の拒否権 5.ルソーのパトリ連合構想の読み直し――新たなEU を模索するために