内容
本書は、2020 年刊行『グレゴリー・ポール恐竜事典』、2024 年刊行『グレゴリー・ポール翼竜事典』の姉妹事典となる海竜に特化した『グレゴリー・ポール海竜事典』である。古生物骨格図や復元図を専門とする画家であり、古生物研究者でもあるグレゴリー・ポール氏による 435 種の海竜の精密な骨格図と復元図が掲載されている。恐竜関連の学術書は数多くあるが、本書のように骨格図や復元図を伴う網羅的な海竜事典は世界的に見ても例がなく、古生物学を志す学生や若手研究者、博物館関係者、古生物愛好家にとってのリファレンスになる稀少価値が極めて高い海竜学術書である。
構成は「海竜概説」と「海竜事典」の 2 部構成となっている。「海竜概説」では、発見と研究史、進化、行動、成長、巨大化などが解説文と図と共に約 60 頁以上記述されている。
中生代の海には首長竜、モササウルス、魚竜など実に多種多様の海生爬虫類が生息していたことがわかっている。この海生爬虫類こそが、まさに海竜である。分類群としては、殻付きの卵を産む卵生の有羊膜類だが、一部は胎生へと進化した。有羊膜類は、無弓類、単弓類、双弓類の 3 つの大きなグループに分かれるが、海竜については、おそらくすべて双弓類に含まれる。体の大きさは、全長 0.3 m・体重 0.025kgの小型種~ 全長 17 m・体重 20 t に迫る大型種まで知られている。海竜の中でも、トカゲ類、ヘビ類、カメ類、ワニ類の一部は、中生代末期に多くの生物が絶滅に瀕した壊滅的な危機を乗り越え、現在も汎世界的に分布している。
海竜の遊泳には鰭が大きな役割を果たしている。本書では、海生哺乳類をはじめとする脊椎動物との類似点や相違点を解説している。
中生代の海を支配し現在もなお生息する海竜にロマンを感じ、古生物に興味をもつマニアックな読者へ贈る唯一の海竜学術書。
[原著]The Princeton Field Guide to Mesozoic Sea Reptiles, Princeton University Press, 2022