内容
【書籍の紹介】
これまで図面を中心に行われてきたモノづくりは,3DCADの導入により3Dの形体と製品製造情報によるモノづくりに移行しています。このような状況の中で,ものづくりの基準をデータムで示し,理論的に正確な寸法(TED),理論的に正確な形体(TEF),形状公差,姿勢公差,位置公差,振れ公差で曖昧な表現がない製品製造情報を図面や3Dモデルに規制する重要性が,モノづくりの現場や機械設計の教育に求められています。さらに,それらの公差をどのように測定し,どのように良否を評価するか,それらについても求められています。
設計製図の教科書には公差の定義と表し方が,計測の教科書には測定機の原理や測定の信頼性が,それぞれ詳細に説明されています。それらを関連付けて理解するためには,モノづくりの経験が不可欠で,特に,機械設計と精密測定を実務で経験する必要があります。
著者は,公設試験研究機関で精密測定(三次元測定,真円度測定,表面粗さ測定)と機械設計に必要な解析(静解析,動解析,非線形解析)を担当し,高専で3DCADによる機械設計,大学で3DCADによるモノづくりについて学生に教育してきました。その経験をもとに,幾何公差の表し方と測定を一冊の書籍にまとめ,モノづくりの実務で対応する公差について,3DCADをベースに図面と測定をわかりやすく解説しました。
【モノづくりの実務に携わる技術者に】
モノづくりの現場では,面を基準とする部品,穴を基準とする部品,軸を基準とする部品,経済的に製作するために最大実体公差を導入している部品など,いろいろな製品製造情報があります。それらを一つ一つ経験することで,理解度は深まりますが,全体を俯瞰的に見るまでには時間がかかります。そこで,本書は,著者が経験したものを整理して,短時間で公差の全容が理解できるようにいたしました。さらに,演習問題で理解を深める工夫もしてありますので,実務で経験をされる前に,是非,ご一読いただけることを期待いたします。
【大学・高専で機械設計の授業をご担当の教員の皆様に】
本書は,機械製図,機械要素,工業力学,材料力学,計測工学などの専門基礎科目を学習された後に開講される機械設計製図の授業で使用できるように記述しました。機械設計では,多くの教育機関で軸の設計から開始されていると考えます。モータの動力(kW)からトルクを計算し,そのトルクに耐える軸の直径をせん断応力から求めたり,ねじり剛性から軸の直径を求めたりします。その軸に軸受を取り付ければ直径の異なる多段の軸になります。図面や3Dモデルの形体でこの多段の軸に製品製造情報をどのように規制し,それをどのように測定するか,そこが,実務者を育成するキーポイントになると考えます。本書では,基準であるデータムの考え方,三次元測定機でデータムを測定する方法から記述しましたので,是非,ご一読いただき,演習問題でご理解を深めていただきたいと考えています。