内容
中東を動かす陰の原理と人びとの息遣い 中東での混乱を伝える報道を目にしても、カラシニコフ銃を握りしめたひげ面の男やヴェールの奥で泣き叫ぶ女性の映像から、現地の人びとが何に悩み、喜び、どんな誇りを内に秘めて生きているのか想像することは難しい。 本書は、イラク戦争と「アラブの春」以降、中東で起きた惨事を市井の人びとの視点から克明に描き、アラブ世界が分裂していく歴史的過程を論じたノンフィクションである。登場するのはエジプト、リビア、シリア、イラク、クルディスタンに暮らす六人――息子が投獄された数学者、スパイ行為を命じられた空軍士官候補生、処刑寸前に命拾いした大学生、ISに参加した日雇い労働者、対ISの戦闘に加わった医師、武装勢力にねらわれ故郷を追われた女性活動家――だ。断続的に綴られる彼らの物語を通じて、中東を動かす陰の原理と、戦火の中に生きる人びとの息遣いが鮮やかに浮かび上がってくる。 『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』のJ・シルバースタイン編集長は「中東問題を描いた作品のなかでもっとも明敏で、力強く、そして人間性に溢れている」と絶賛。欧米主要紙誌で称賛の声が相次いだ。