内容
「民主主義はその行き過ぎによって病んでいる。そこでは自由は暴政と化し、人民は操作可能な群集へと姿を変える。進歩を促進しようとする欲望は、十字軍の精神に変化する。経済、国家、法は万人の開花のための手段であることをやめ、いまや非人間化のプロセスの性質を帯びている」今日、民主主義の危機は外部(ファシズム)からやって来るのではない。民主主義みずからが内なる敵を生み出し、自身の存立を脅かす。すなわち、政治的メシア信仰、個人の専横、新自由主義、ポピュリズム、外国人嫌いである。シリア内戦、IS、難民、テロ――現在時の危機を通じて、「進歩、自由、人民」というリベラルな理念がいかに社会全体の幸福を危うくするかを抉り出す。みずからもブルガリアからの移民であるフランス思想界の大御所が、民主主義の再生へ向けて新たな多元主義と共存の方途を探る、渾身の現代政治文化論。