内容
本書は,現代制御の基礎を学ぶのに必要最小限の内容に厳選したうえで,概念や定理をわかりやすく丁寧に解説している。また,大学の講義を意識して14章からなっていることと,各節ごとに「さらに詳しく」のコーナーを設けていることが構成上の特徴である。「さらに詳しく」では,文字通り,さらに一歩踏み込んだ解説をすることで,現代制御を学ぶ過程のつぎのステップに進むための橋渡しとなっている。
本書では,可制御,可安定,可観測,可検出について,これらの概念の説明とともに,伝達関数における極零相殺との関連について数値例を用いて検証している。可制御性と可観測性はシステムの構造に固有な性質であり,システム構造理論の中核をなしていることから,多くのページを割いている。
制御系設計法の一つである「折返し法」は,最適レギュレータでありながら,指定の領域に閉ループ系のすべての固有値を配置することができる。本書では,その原理を詳細に解説している。加えて,折返し法の発展形である「選択的折返し法」を適用した数値例も扱っている。
このように,多くの市販本には書かれていない事項が丁寧に解説されている本書は,参考書,独学書としても手元に置きたくなる,存在感のある1冊に仕上がっている。