内容
本書で扱われている数学は証明を中心とするものである。高校までの数学では、実際の勉強の中身は計算主体であるといえるだろう。そこで、「公式や定理を証明し、それらが成立する理由、メカニズムを明らかにする」という本格的な数学の世界を、整数論を題材として体験してみようというのがこの本の主眼である。本書では、純粋数学だけでなく暗号理論に1章を割いて、RSA暗号の仕組みを解説している。図式を多く使い、特にハッセ図式を取り入れているが、このような記述をしている整数論の本はかなり珍しいと思われる。これは、文字の論理だけでなく、視覚的にも理解を進め、全体像を把握できるようにするためである。
本書で必要な予備知識は中学レベルのものとなり、数学から離れていた文系の大学生や、高校生でも読み進めることができる。証明は各論理のステップを省略せずに記述し、それでも理解しにくいかと思われる部分には例を挙げ、理解を促すよう配慮している。また、より楽しく学べるよう、数学の歴史や、数学者の人物像、数学に関連する映画、小説、ドラマなどの話題も多く取り入れた。