内容
多くの概念が組み合わさってリーマン対称空間の構造が現れていく過程を味わう。
数学の美しさの一つは分類である。例えば正多面体は五つしかないが、リーマン対称空間も有限個の型に分類でき、この分類はE. カルタンが1920年代に完成させた。この流れを紹介することが本書の主題である。
また、数学の面白さは、色々な概念が融合することによって、見えなかった形が見えてくることである。代数学の有限群論から始まり、群の作用を考えればその軌道分解が得られ、群の構造が見えてくる。そこに位相や多様体としての構造が付加されると、対象がだんだん研ぎ澄まされていく。さらに幾何学的な対称性を付加することにより、リーマン対称空間の分類が可能になる。群、位相、多様体、リー環、対称といった多くの概念が組み合わさることで、リーマン対称空間という構造が明確に現れる。
第I部で具体的な計算にじっくり取り組み、第II部では連続群の話からリーマン対称空間の分類が形式化されていく過程を俯瞰してほしい。
基本は行列からなる群、すなわち古典群であり、本書で使われる計算はこの行列計算のみである。しかし分類を理解するには群と位相の基礎的な概念や、多様体、リー群とその等質空間などの数学を理解する必要もある。多くの例題を載せたので、それらを理解するだけでも楽しい学びとなるだろう。