翻訳・校正会社の賢い使い方:対訳リストを提出する
対訳リストとは
翻訳会社に翻訳を依頼する際、参考資料のほか「対訳リスト」を提出することが望まれます。対訳リストは、「グロッサリー(Glossary)」や「用語集」などとも呼ばれ、原語の単語やフレーズとその訳語の1対1関係を示すリストです。翻訳会社によっては決まったフォーマットを用意していたり、オンラインで入力できるようにしていたりすることもあります。
翻訳の現場において、翻訳者が意味を明確にするため、あえて文脈などによって同じ単語を訳し分けるということがありますが、対訳リストで訳語を指示すれば特定の単語は確実に決まった単語に訳してもらえます。フレーズの中に組み入れられた際の例外なども、リストの備考欄に記入することでより細やかな指示が可能になります。
対訳リストの提出が望ましいケース
例えば、専門用語で訳語が複数あるような単語やフレーズに遭遇すると、翻訳者は依頼主の業態や、文書がターゲットとする読み手、掲載媒体などによって、それら複数の訳語がどのように使われているかの傾向をリサーチし、一番ふさわしいと思われる語に訳出します。しかし十分にリサーチしたからといって、依頼主の想定していた訳語になるとは限りません。その結果、翻訳者側でもリサーチに時間をとられ、依頼主の側でも初稿への修正依頼をかけなければならず、無駄な労力がかかります。
ですから、初めから社内で決まった訳語がある場合などは対訳リストを提出するようにしましょう。英語から日本語への翻訳などで英語表記そのままを希望する語や社外にはわかりづらい略語などについても同様です。
対訳リスト提出のメリット
対訳リストを提出すれば、翻訳者がリサーチに費やす時間も短縮され、翻訳のスピードは向上します。また、単語レベルでの訳語の正確さや一貫性をもたらしてくれるだけでなくリサーチの負担が軽減され翻訳者がより文章に注力できるための、全体的な品質の向上が期待できるのです。
対訳リストとCATツールを使った翻訳
対訳リストによるスピードアップと品質の向上を最大化してくれるのがCATツールと呼ばれる翻訳支援ツールです。CATツールは頻出する単語やフレーズ、表現の翻訳を保存し、それらを「翻訳メモリ」として蓄積していくため、対訳リストの訳語を翻訳者が訳文に落とし込めば、次からはツールがその訳語や訳文を引き出してくれ、翻訳者の作業が大幅に軽減されます。複数の翻訳者が関わる大規模なプロジェクトなどでも用語の統一が図れます。マニュアルが定期的に改訂されるなど、プロジェクトが継続的な場合には、表現の重複などが起こり、その強みが生かされます。
ですから提出する対訳リストとCATツールをうまく使って作業を効率化してくれる翻訳会社に翻訳を依頼するのが、将来的な意味で翻訳コストの圧縮につながるはずです。過去の翻訳があってそれとの整合性が必要という場合でも、それをそのまま翻訳会社に送ってその中から対訳リストの抽出を依頼する場合には、通常の翻訳とは別の作業になりますので追加コストが掛かる場合がほとんどでしょう。依頼主の側で対訳リストを作成して提出するのが、コスト面でも品質面でもより確実なのです。